在宅勤務
正和設計株式会社
本社所在地 | 大津市打出浜3-7 |
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代表者名 | 代表取締役社長 田中英幸 |
創業 | 1964年 |
従業員数 | 80名 |
ホームページURL | https://seiwa-cc.co.jp |
- ・ 育児、介護をしながら働く社員の環境整備のために
- ・ テレワークの推進で遠隔地の優秀な技術者の採用へ
- ・ 新たに策定した就労規則が省庁への申請にもひと役
優秀な人材を確保するために
テレワークで拡がる可能性
建設事業の総合的なコンサルティングを手掛ける正和設計株式会社では、緊急事態宣言をきっかけに在宅勤務を導入されました。専門的な技術と知識を必要とする業務が多い中で、遠隔地からの人材確保も視野に入れ、テレワークの環境整備やルールづくりに取り組まれています。その経緯と現状を監査役の辻上武彦様に伺いました。
コロナ禍の緊急対応から見えてきた在宅勤務の難しさ
滋賀県で緊急事態宣言が発令された2020年4月、県外からの通勤者を中心に在宅勤務を導入しました。しかし、テレワークを始めてみると想像以上に弊害が多く、ノートPCやデスクトップPCを貸与しましたが、設計部門で使用しているハイスペックPCの貸し出しには限界がありました。ノートPCではCADが使いづらく、新しく6台のPCを購入しましたが、設計担当者約50人のテレワーク環境を整えるにはソフトのライセンス取得に多くのコストが発生します。
また、設計基準書などの必要な資料が紙ベースであることから、結局出社しなければならないなど、いくつも問題が起こりました。一方、比較的リモートワークに移行しやすいと考えていた総務部門でもデジタル化ができていない帳票類があり、在宅ではできない業務が多いことがわかりました。当社ではSDGsへの取り組みも進めており、勤怠管理のWEBソフト、電子契約サービスを使ってペーパーレス化に早くから努めてきました。ところが、各ソフトに一長一短があるため一つにまとめることが難しく、またクラウドではなくオンプレミスのシステムが多いこともテレワークを導入するうえで壁となりました。
経営方針としての目標設定とまずはどこから始めるか
在宅勤務に関しては、コロナ禍での緊急措置としてだけでなく、育児や介護をしながら働く社員たちから常に在宅勤務制度を取り入れてほしいと希望が挙がっており、働き方改革の一貫として取り入れたいと考えていました。また、優れた人材の離職を防ぎ、採用の範囲を拡げていくためにはテレワークを推進する必要があり、環境の整備を行っておりました。
しかし、環境の整備には投資が必要なうえに、社内規定も整備されていない中ではどこから手をつければいいのかわからない状態でした。滋賀県中小企業団体中央会からテレワーク支援事業のお話をいただいたのは、まさにそんな時でした。まずは弊社の状況や課題をヒアリングしたうえ、二回目の支援ではITの専門家による課題の洗い出しをしていただきました。当社の場合はペーパーレス化の推進のほか、本社のサーバーにリモートアクセスできるVPN環境の整備、情報セキュリティに関するISO認定、またシステム専門の管理者をおいている点などを評価してくださり、その上で「経営方針としてテレワークにどの程度の力を入れて推進するのか。予算的・体制的に必要リソースの見通しをつけるため、目標設定が重要」とアドバイスをいただきました。
まずは人材確保が必要な設計部門からテレワーク導入をと考えています。三回目の支援では社会保険労務士の方から、在宅での作業環境への留意点など、規定の整備方法について指導を受けました。提供いただいた厚生労働省のパンフレット「テレワークモデル就業規則」を参考に、早速、社内規則を策定して運用しています。
地方企業の人材確保には「通勤不要の働き方」導入は大きなメリット
実は建設業界にはテレワークに関する壁がもう一つありました。国土交通省の規定で事業所ごとに専任の技術士を置くことが定められており、業務の安全性確保のために「常勤」することが義務付けられています。コロナ禍で特例としてテレワークを認める措置が導入されていましたが、2021年12月から恒久化され、ICT等の活用を条件にそれまで難しかった専任技術士のテレワークが可能になりました。
つまり、遠隔地の技術者を採用することも視野に入れられるようになったわけです。地方の建設業者にとって優秀な人材を通勤圏内から確保することは長年頭の痛い問題だっただけに、当社にとってこの改正は通勤圏外からも技術者を採用できるチャンスといえます。まずは在職者から在宅勤務希望者1名の手続きを進め、今後も技術士16人中2~3人の認可を受ける予定です。申請の際には、社労士さんのアドバイスをもとに策定した就業規則が早速役立ちました。
また、2021年11月からは年末調整と給与明細のクラウド運用をスタートし、総務業務のネットワーク化が一歩進みました。申請関連でいえば国交省はデジタル化されていますが、市町村ではまだまだ紙ベースが多く、こちらは行政と一体となったテレワーク推進が必要だと感じています。テレワークを始めとする働き方改革を人材確保のチャンスととらえ、これからもさまざまな視点で取り組みを進めていきたいと思います。
VOICEシステム管理者
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能力の高い技術者や経験を積んできた方が出産や育児、介護で仕事を続けられなくなるのはとてももったいないことです。それをシステムの整備で繋ぎとめられないかと以前から準備を進めてきました。人材確保というキーワードはテレワークを推進する上で一つの突破口になります。新たな基幹システムの導入などには補助金の申請条件などのハードルもあり、思うように進まない点もありますが、方法を模索していきたいと考えています。
テレワーク業務の流れ
テレワーク『はじめの一歩』
ワンポイントアドバイス
新たな採用方法が見えた、遠方の求職者とのZoom面接
テレワーク導入にはまず企業全体としての方針を明らかにすることが重要で、そのためには上層部が自ら体験してみることが大切です。上司が現在テレワークをメインの働き方にしていますが、役職者の業務は多岐にわたるため在宅業務はなかなか難しいと思います。入口として身近なのはZoomを使った会議で、当社でも積極的に取り入れています。また、リモート環境を使って関東や北陸から関西へUターン就職を希望する方と面接を行い、採用することもできました。在宅勤務の環境がさらに整えば、全国から優秀な人材を採用できると期待しています。