事例集

在宅勤務

宮川印刷株式会社

企画・デザイン制作や印刷・加工技術を中心に、マーケティング・販売促進、グラフィックデザイン、WEB制作、動画制作、イベントサポート、業務代行などを行っています。創業110周年を迎え、これまでのノウハウを活用しながら、既存の印刷会社の事業領域を超えるさまざまな新商品・新サービスを提供しています。

本社所在地 大津市富士見台3-18
代表者名 代表取締役 宮川佳嗣
創業 1912年
従業員数 80名
ホームページURL https://www.miyagawainsatsu.co.jp
導入ポイント ▼

  • ・ 可能な部署、可能な業務から、まずは在宅勤務をスタート
  • ・ 在宅勤務の問題点を洗い出し、特例的な勤務規定を策定
  • ・ 育児介護休業法の改正に合わせて就業規則全体を見直し

働きやすい環境整備のために
まずは独自のルールづくりから

印刷全般からマーケティング、クリエイティブ事業を手掛ける宮川印刷株式会社では、早くからICTを活用したモバイルワークやリモートでの顧客対応業務を実施してきました。しかしコロナ禍で在宅勤務が必要となる中、改めてさまざまな課題が浮上したといいます。代表取締役の宮川佳嗣社長に、対応策と今後の働き方改革への取り組みについてお聞きしました。

業務のネットワーク化を進めるも「在宅勤務」には思わぬ課題が

印刷やマーケティングを主な業務とする中では、常に迅速な対応と円滑な社内連携が求められ、またお客様からお預かりした情報についても徹底した管理が不可欠です。そのため業務へのIT機器導入を積極的に行い、ネットワークの構築においてもデータを安全にやりとりするための「VPN接続」や効果的にセキュリティ管理ができる「UTM」を採用し、「プライバシーマーク」もいち早く取得してきました。印刷物の工程管理では印刷に特化したワークフローシステム「XMF Remote」を導入。従来はお客様に校正していただく際、営業マンがプリントアウトしたものを持参して対面で確認いただくことが一般的でしたが、リモートでの作業が可能になりました。また、社内連携については各自にスマホを貸与し、出先からでも「Google Workspace」で報告や情報共有ができるようモバイルワークの環境を整えています。
ところが、それらはあくまでも“出社”することを前提にしており、新型コロナウイルスの流行下で新たな課題が浮上しました。2020年4月、滋賀県に緊急事態宣言が発令され、従業員の出社制限が要請される中、テレワークの中でも特に在宅勤務の難しさが見えてきたのです。

緊急時のテレワークと働き方改革としての在宅勤務

これまでも制作部門のオペレーターが怪我をした際に在宅勤務をしたことはありました。しかし全社を挙げてとなると難しく、例えば印刷部門は工場を稼働させないことには仕事にならず、総務経理部門では会計業務はデジタル化されているものの、証票の確認は紙ベースで、勤怠についてもタイムカードの打刻、申請には上長の押印・回覧を必要としています。

制作部門においてもデザイン作業にはハイスペックのデスクトップPCが必要で、在宅勤務の環境を整えるためにはかなりのコストがかかります。緊急措置としてPCを貸与し、誓約書を取り交わす仕組みづくりをしましたが、それでも誰かが出社して在宅勤務者のフォローをしなければならず、結局、最初の緊急事態宣言下では全員を半休とし、入れ替え出社制にしてテレワークの実施者は数人に留まりました。ただ、宣言終了後も出産・育児や介護問題を抱えている社員からテレワークを希望する声が上がっており、働き方改革に苦慮する中で、滋賀県中小企業団体中央会の「中小企業テレワーク『はじめの一歩』支援事業」を受けることになりました。同事業では当社の現状を伝え、希望者への対応、ルールの取り決め方、環境整備のための補助金情報などについて質問し、有効なアドバイスをいただくことができました。

特例としてのルールづくりと法改正にあわせた就業規則全体の改編

最初のヒアリングの際、訪問支援では社会保険労務士にお越しいただけると伺い、2022年春に予定されている「育児介護休業法」の改正について社労士さんにぜひアドバイスをいただきたいとお願いしました。支援に際しては、詳細な資料を提供いただき、施行内容と事業所として準備すべきことについて説明を受けることができました。現状の社内規定では改正に対応できておらず、またテレワークについての記載もありません。

厚生労働省から今後発せられる「規定例」を社労士さんが用意してくださったことで、それを参考に現在、就業規則の全体的な改編を進めているところです。今は制作部門のWEBチーム6人のうち4人がテレワークを継続しており、勤務規則を設けて毎月書面を交わしています。そのうち1人は子育て中の女性で、これまでは6時間の時短勤務制ながら片道2時間かけて通勤してくれていました。コロナ禍をきっかけに在宅勤務に移行し、仕事の時間もプライベートな時間も確保できるようになったと喜んでくれています。
テレワークの環境が整いつつあることで、遠方の技術者を採用できる可能性も見え、また育児や介護での離職を防止できるほか、この冬の大雪で多くの社員が出社できなかったときにも休業することなく業務を継続することもできました。部署や担当業務によっては在宅勤務が難しく、不公平感が社内で課題になったこともありましたが、まずは非常時であっても業務を遂行していくことが重要であり、テレワークができる部署・業務からはじめていくという方針をしっかり発信することに努めました。創業110周年を迎え、次代へと事業を続けていくために、これからも働きやすい環境づくりを模索していきたいと思っています。

TOOLテレワーク活用ツール

  • VPN接続

    インターネット上に仮想の専用線を設定し、特定の人のみが利用できるようにした専用ネットワーク。接続したい拠点に専用のルーターを設置し、安全にデータのやり取りを行うことができる。

    活用例

    リモートでの業務においてセキュリティを強化。テレワークにも活用している。

  • UTM

    コンピュータウイルスやハッキングなどの脅威からコンピューターネットワークを効率的かつ包括的に保護する管理手法。「Unified Threat Management(統合型脅威管理)」の略。

    活用例

    「プライバシーマーク」の認証を受けていることから、UTMを活用してセキュリティ機能を集約し、コストの低減とシステム管理者の負担軽減を図っている。

  • XMF Remote

    印刷に特化した富士フイルム製のワークフローシステム。入稿から制作・校正・検版・進捗確認・刷版までを管理でき、営業やオペレーター担当、顧客がリモートで現状を共有できる。

    活用例

    顧客の校正ではプリントアウトを持参することなく、対面なしでやり取りが可能に。コロナ禍で顧客サイドのリモート環境も整い、利用への要望も増えている。

テレワーク『はじめの一歩』
ワンポイントアドバイス

勤務規定整備やルール策定には専門家の活用がおすすめ
宮川印刷株式会社
総務経理課 課長
須川雅之 様

テレワークの勤務規定の整備やルール策定については私たちも最初は手探りでした。そういう時こそ専門家の知見を活用することをおすすめします。現在「コロナ感染回避対策期間中」や「見守り介護のための特例措置」など個々の状況にあわせた限定的な勤務規則をつくり、就業規則の別添として毎月誓約を取り交わしています。出産や育児、介護にあわせた在宅勤務の希望者は年々増えていくでしょう。特に当社は“イクメン”も多く、男女や年齢、部署を問わず働き方の柔軟さを追求することはますます必要になっていると感じています。

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