事例集

モバイルワーク

株式会社古川与助商店

昭和初期より西陣織に使われる金銀糸を製造。その製造工程でのフィルムを細かくカットする技術を応用し、和紙や不織布などを細いテープ状に切り、巻き取るスリッター加工のほか、和紙糸や和紙生地を生産しています。和紙糸で作ったジャケットやブラウス、ボディタオルなどの製品開発も手がけることで、伝統を守りながら、可能な技術を追求し、新しい挑戦を続けています。

本社所在地 大津市桐生三丁目12番1号
代表者名 代表取締役 河村朱美
創業 1935年
従業員数 4名
ホームページURL http://yosukeshiga.com/
導入ポイント ▼

  • ・ スリッター加工の記録をデジタル化して時短、作業効率アップ
  • ・ テレワークによるメール送信で営業アプローチ
  • ・ PC環境の整備、就業規則、セキュリティ対策などの検討

働き方改革、会社の事業力強化、
製造業としてできる限りの挑戦を

西陣織の金銀糸の加工技術を応用し、スリッター事業を中心に和紙製品の製造などを手がける株式会社古川与助商店では、作業の効率化、働き方改革の推進に向けて、IT化、モバイルワークの導入を計画しておられます。「製造業としてできる限りの挑戦をしたい」という代表取締役の河村朱美社長に導入への構想をお聞きしました。

代表取締役 河村朱美 様

品質保持に重要な作業記録をデジタル化して時短をめざす

ITやモバイルワークは、弊社には関係ないと思っていましたが、製造業としてできる限りの挑戦をしたいという希望もあり滋賀県中小企業団体中央会の「中小企業テレワーク『はじめの一歩』支援事業」を受けました。専門家の方々による具体的なアドバイスは「こういうこともできるんだ!」という発見のきっかけになりました。最初にデジタル化するのは、製造現場での作業記録のデータ管理です。

スリッター加工では、巻き取りのテンション(糸を張る強弱のバランス)が非常に重要です。材料の特性や天気、湿度による微調整を昔の職人は指の感覚で調整していました。製品の品質保持、均一化、また将来の技術の継承を見据え、作業員全員で共有できる情報として残すため、10年ほど前から、某繊維会社研究室OBの方にご協力いただき、機械の設定などテンションに関わる工程を数値化し記録しています。優良なデータを抽出して紙でファイリングしていますが、大量のファイルから、必要なデータを探すのにかなりの時間がかかっています。紙に記録しているデータをデジタル化すれば、ファイルから探す手間と時間の大幅短縮ができ、またテレワークでデータを参照しながら翌日作業のシミュレーションをすることもできます。紙のデータをデジタル化するには時間を要しますが、効率化、データ活用によるメリットを考えるとデジタル化は必須です。ほかにも、機械の刃の交換時期の管理にも活用を検討しています。1台の機械に対し4~5種類のサイズの刃があります。機械は5台あるので、煩雑な管理業務をデジタル化したいと考えています。

テレワークで営業アプローチ、ビジネスチャンスを創出

従業員が4名の弊社では専任の営業担当者はいません。インターネットで検索して、気になる会社があれば、問い合わせフォームやメールで「こんな仕事をしています」というメッセージを送信してもらっています。使い道がなく処分するしかない素材を倉庫で眠らせている会社もあるでしょう。そうした素材を細かく切って糸にすることで、全く新しい商品が生まれ、新分野に進出できたという事例もあります。

従業員には日頃から「これを切って何かを作り出せるのでは?」ということを意識して見つけて欲しいと伝えています。弊社を知っていただき、「切ることで新しい価値が創造できます」という営業を積極的に行っていきたいと思っています。テレワークの導入で、こうしたメールによる営業アプローチを自宅や出先からもできますし、製造現場のIT化が実現すれば作業時間の短縮分をテレワークに充てることも可能です。メッセージの定型文を作り、1日2件ずつでも毎日どこかの会社にメール発信できれば、年間で相当数の営業になります。ビジネスチャンスを確実に創出し、異業種の会社とつながる機会も広がると期待しています。

PC環境の整備が課題、働き方の選択肢を

製造現場のIT化、テレワーク導入に向けては、事務所のPCが古いこともあり、まずは買い替えと製造現場にもPCの導入が課題です。今回の事業でノートPCを貸与いただき、まずは社長の私からシン・テレワークシステムを活用したテレワークを体験しました。どこからでもメール対応ができ、社外から会社のPCにアクセスして遠隔操作ができるのはとても便利です。これまでは休日でも取引先から連絡があると出社しなければなりませんでした。自宅やカフェなどでゆっくりとメール返信ができ、気持ちに余裕ができるので、イメージが膨らみ、多様なアイデアも湧いてきます。従業員にもテレワーク構想を伝え、シン・テレワークシステムを体験してもらいました。これならできそうだという意見が多く、期待が高まっています。今後、従業員の家庭環境や介護などで勤務が難しいという状況も想定され、そんな時にテレワークという働き方の選択肢を導入することは離職防止に繋がるでしょう。テレワークによる営業では、受注獲得に対してインセンティブを導入し、人事考課にも反映するなど、意欲向上につながる体制も考えています。導入に向けて、PC購入に活用できる補助金の申請、就業規則、セキュリティ対策などの検討を進め、導入後は給与計算、伝票類、顧客管理、勤怠管理などにもデジタル化を進め、働き方改革、そして会社の事業力強化にも必ず貢献できると確信しています。

Wワークで視野を広げ人として豊かな経験を

IT化、テレワーク導入で空いた時間を月に1度でもよいのでダブルワークできる体制を作るというのが、最終的な目標です。他の職場での体験で、視野やいろんなアイデアも広がるでしょう。そうした経験を紐づけして自分ならではの発想ができれば仕事や人生のあらゆる場面で必ず役立つと思います。今ある環境に感謝できるようにもなるでしょう。自分で無形の財産を形成し、人として豊かな経験を積んでもらいたいと考えています。

IT化、テレワーク構想

テレワーク『はじめの一歩』
ワンポイントアドバイス

「できるかも」という気づきがはじめの一歩になります
株式会社古川与助商店
代表取締役 河村朱美 様

製造業では、ITやテレワークは無縁と思っておられる方が多いと思います。専門家の方とお話しすることで「こんなこともできるかも」「あの課題を解決できるかも」という気づきが生まれます。そこからそれぞれの会社での展開も考えられるでしょう。今まで移動時間と交通費を使っていた営業活動もPCでチャンスメイクをすることも可能です。製造業にもいろんな活用アイデアがあります。まずはできることへの気づきがはじめの一歩になります。

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