組合運営業務のデジタル化に関するアンケート調査 報告書
調査概要
滋賀県中央会傘下の中小企業組合を対象に、組合運営業務に係るデジタル化の実態についてアンケート調査を実施。アンケートでは、IT機器の導入状況やデータ保存・バックアップ体制の実態、業務をデジタル化する上で重視することや、あい路(物事を進めて行く上で妨げとなる点)について151組合から回答。
調査結果の要約
質問1…組合員の主な業種の分布
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質問2…組合事務局で使用されている情報機器の種類と導入状況
組合事務局で使用されている情報機器としては、ノートパソコンとデスクトップPCの割合は拮抗している。サーバーを設置している組合は12%程度となっており、パソコンなどの端末でデータ管理を完結される組合が多い。
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質問3…組合事務局がデジタル化を進める上での重視する項目について
デジタル化をする上での重視する項目としては、「組合業務の効率化」を選択する組合が最も多く、次いで「経費の削減」、「情報収集力の強化」が上位に選ばれる結果となった。組合事務局においてもデジタル化=効率化を重視する傾向が強い。
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質問4…組合事務局がデジタル化を進める上での課題について
デジタル化をする上での課題としては、「専門知識を持つ人材の確保」を選択する組合が最も多く、次いで「情報セキュリティ対応への不安」、「費用対効果が不明」が上位に選ばれる結果となった。デジタル化が進展する中で組合事務局の情報リテラシーの向上が課題である。
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質問5…デジタル化を進める上で必要なサポートのランキング
デジタル化をする上で必要なサポートとしては、「デジタル化に関する情報の提供」が最も多く選択されたが、「相談できる専門家の紹介・派遣」、「情報機器に対する補助金」「システム導入に対する補助金」の回答についても、回答割合が分散する結果となった。
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質問6…情報機器の管理・メンテナンス方法の分布
パソコンやサーバーといった情報機器の管理・メンテナンスの方法については、「販売業者に依頼している」ケースが約半数を占めており、次いで「組合事務局の職員が実施している」が多い結果となった。
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質問7…情報機器の活用状況のランキング
情報機器の活用としては、「文書・資料の作成」が最も多く、次いで「財務・会計管理」の回答が多かった。組合事務局では、現在も紙媒体での配布が主体となっているものの、配布される文書の作成自体はデータで作成されていることが多いことがうかがえる。また、会計業務についてもアプリケーションを活用してパソコン上で処理されているケースが多いことが分かった。一方で、「Web会議」や「Web講習会・研修会」、「テレワーク」等での活用については低い結果となった。
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質問8…情報セキュリティ対策の導入状況
組合事務局における情報セキュリティ対策については、「ウィルス対策ソフトの導入」が最も多く38.3%組合で導入されている。次いで「パスワードの設定やログ管理」、「ファイヤーウォールの導入」という結果となった。これら上位3位までの対策で全体の7割を占めている。
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質問9…情報セキュリティ対策に関する課題
情報セキュリティ対策における課題については、「専門知識を持つ人材の確保」が最も多く選択された。【質問4】のデジタル化を推進する上での課題と共通する傾向が、セキュリティ対策においても現れる結果となった。
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質問10…データのバックアップ対策の導入状況
組合事務局で扱う各種データのバックアップ対策については、「USBメモリやDVD等のメディアに保存」している組合の割合が最も高く、次いで、「外付けハードディスクへの保存」、「バックアップ用のサーバー設置」という結果となった。自然災害などで事務所が被害を受けた際には、クラウドサーバーなどへのバックアップが有効であるが、オンラインでのデータ管理の導入は12%となっている。
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質問11…Web会議システムの実施状況
組合におけるWeb会議システムの活用状況については、約60%の組合で「実施していない」実態が明らかになった。コロナ禍で利用が拡大したWeb会議システムだが、調査時点では実施している組合は約40%となっている。
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質問12…Web会議システムを活用している内容の分布
質問11においてWeb会議システムを活用していると回答した組合の活用内容としては、「外部主催研修会・講習会」の受講が最も多く、次いで「関係団体との会議等」という結果になった。業界の全国組織の会議やブロック会議等においては、Web会議システムの活用が拡大している。
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質問13…Web会議システムを活用していない理由のランキング
質問11においてWeb会議システムを活用していないと回答した組合の活用内容としては、「必要性を感じない」が最も多い回答となり、次いで「組合員における機材や通信環境の不備」、「組合における機材や通信環境の不備」となった。
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質問14…デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する関心度
DXに関する関心度については、回答のあった組合のうち60%が「関心がない・必要性を感じない」となる一方で、40%組合では「関心がある」「関心があり、組合で検討している」「具体的な取組みを始めている」という結果となった。
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質問15…DXに関する検討内容や具体的な取り組み内容の記入
組合におけるDXに関する検討内容や取り組み内容関する自由記述の内容は下記の通り。
- 現在の紙ベースでの業務を行っている内容で、できるところから電子化できるか検討します。
- 顧客管理システムおよびマーケティングオートメーション導入を検討
- 作成書類、名簿等の管理システムの検討
- 販促、情報発信の媒体のデジタル化への移行
- 導入方法、知識の習得より始めている。費用面、有効性を含めて検討していきたい。
- 先進的な取り組み事例等の情報収集
- Zoomを使用した講習会の開催と運営、クラウド会計の使用、電子帳簿保存法に対応した書類の保存、グーグルフォームを用いた会員からの出欠管理等
- 組合員と事務局間、事務局と各関係省庁・団体間での文書手続き、金銭授受を電子化したい。
- Web会議を導入して時間的な制約や、経費削減に繋げたい。
- 営業日誌をクラウドシステム化実施済み
- 電話・FAXによる大半の注文をシステム化検討
- 各種研修の申請を二次元バーコードを用いて、スマートフォン等から受付している。
- 車検予約をシステム化している。
- 車検証の電子化に伴い、ETCセットアップ業務、自賠責保険交付義務等のシステム改修が予定される中、それらの対応。
- ほとんど郵送であったものをメール送信に変更している程度
- システム導入などは、親会で全国的なシステム共有による情報交換をしている。
- 協賛企業NTT運営のビジネスチャット「エルガナ」を導入したり、ブロック別のLINEグループなどを取り組んだりしているが、なかなか浸透しない。情報は、10数軒を除いてメールにて情報をながしているが、見ていない組合員も多く感じる。
- QRコード決済の統一規格「JPQR」の普及推進と情報セキュリティセミナーの実施
質問16…DXに関心がない・必要性を感じない理由のランキング
質問14においてDXに関心がないと回答した組合の理由としては、「取組むための人材がいない」が最も多く、次いで「組合業務における優先順位が低い」、「どう取組めばよいか分からない」と続いた。
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まとめ
アンケート調査から、組合運営業務におけるデジタル化において、「組合業務の効率化」や「経費の削減」、「情報収集力の強化」を重視する組合が多いものの、一方でデジタル化に関する「専門知識を有する人材の確保」や「情報セキュリティ対応への不安」、「費用対効果が不明」などのデジタル化のあい路を抱える組合が多いことが明らかになった。
組合事務局におけるパソコン等の情報機器の導入率は高いが、デジタル化の次の段階として、クラウドサービスを使った業務や、オンライン会議については実施していない組合が多く、組合事務局が求める支援として「デジタル化に関する情報の提供」「相談できる専門家の紹介・派遣」「情報機器に対する補助金」など上位に挙がっていることからも、組合運営業務のデジタル化の進展には、情報人材や事務局の情報リテラシーの向上が必要となっている。