組合で取り組むSDGs
SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)は、2016年スタート後、産業界や教育界を中心に広く知られるようになり、社会全体での関心も高くなってきています。「2030年までに国連の加盟国すべてが達成すべき持続可能な開発目標」は17の目標とそれを達成するための169のターゲットから構成されており、近年では、SDGs経営の必要性を認識し、組織活性化や生産性向上等の会社の発展、ひいては社会貢献等の意義・目的を持って活動する中小企業が増えてきています。
(出展:【近畿経済産業局】中小企業のためのSDGs活用ガイドブックより一部抜粋)
1. 組合を通じて中小企業がSDGs に取り組む理由とは
(1)SDGsを意識しなければならない時代の到来
世界には貧困や紛争・テロ、温暖化・気候変動、資源の枯渇など、解決しなければならない多くの問題があり、このままでは人類が地球で暮らし続けていくことが困難になると言われています。こうした問題を解決すべく、「人間が地球でずっと暮らしていけるような世界をつくるために、みんなで実現すべき目標」として、国連が定めたものがSDGsです。昨今、国内でSDGsは急速に認知度が高まっており、その重要性は多くの方が理解を示すところです。他方、企業経営においては、「持続可能な開発目標」と言われても「どのように取り組めばよいか分からない」という事業者も少なくありません。新型コロナウイルス感染症の影響もあって、経営を維持することに手一杯で「取り組む余裕などない」事業者もいることでしょう。
しかし、SDGsは企業経営において身近なもので、「知らないうちにSDGsを実践していた」という例も少なくありません。また昨今、消費者や一部の大手企業では食品ロスやプラスチックごみに対する認識が不十分な企業との取引を嫌厭する方向に向かっています。さらに、これから就職する学生たちは義務教育からSDGsを学んでおり、SDGsに取り組む企業を就職先の選定理由とすることも予想され、まさに企業経営においてSDGsが謳う「持続可能性」を誰しもが考えずにはいられない状況にあると言えるのではないでしょうか。
(2)中小企業にとってのSDGsとは ~ SDGs活用のポイント~
SDGsは歴史的に社会貢献活動CSRの一環であると捉えられがちですが、SDGsは経営に活用すべきもので、取り組み次第で、経営強化につながるものです。
中小企業にとってSDGs に取り組む意義・活用のポイントについてご紹介いたします。
○SDGsが企業に求めているのは「事業そのものによる社会課題の解決」への取り組み
事業活動による取り組みであるということは「利益を上げられる持続可能な事業運営(経営)」が前提となります。企業にとっての義務や費用負担の増大などのデメリットを前提とするものではありません。
○SDGsは身近なもので、企業経営に活用すべきもの
SDGsは明確な認定基準があったり、誰かに認証されたりするものでもありません。例えば多くの企業が取り組んできたISO規格のような審査があるわけでもなく、取り組んだからといって直ちに確実に利益が生じるわけでもありません。
SDGsへの取り組みとは世の中に様々ある社会課題―少子高齢化、ゴミ問題、食料自給率、後継者不足、空き家問題、ジェンダー問題、異常気象…などに事業活動を通して解決を図ることであり、企業の多くはすでに何かしらの社会課題解決へ貢献する取り組みを行っています。特に日本の中小企業や小規模事業者の経営者こそ、三方良しの精神でお客様と社会と自社とがそれぞれより良くなるという経営を強く意識していることも多く、気付かないうちにSDGsへの貢献を事業の中で行っているのです。
このようにSDGsは身近なものであり、あとはこれを認識し、企業の発展のためもっと経営に活用していこうという姿勢を持てば、より前向きにSDGsに取り組んでいけるでしょう。
○SDGsへの取り組みは「経営にプラスになるもの」
- SDGsの対象である「社会課題解決」の市場規模は「1,200兆円」と言われている
- SDGsは世界に通じる「共通言語」。自社の経営・事業を世に伝えやすくするもの
- 大企業や金融機関、投資家、消費者からの信用、支持の獲得につながるもの
- 採用活動など人材確保に優位に働くとともに、社員の企業への愛着、業務への誇りを高めること等に寄与するもの
- さらに、社員のSDGsへの意識・認識の高まりは「社会課題解決」に資するニュービジネスの創出や業務上の新たな改善等にもつながるもの
SDGsの取り組みは、長期的には、経営の強化や事業の持続性につながり、結果として「会社の利益」につながります。経営のプラスになるものであると認識することが必要です。
2. 経営の面からSDGs を意識した方が良い4つの視点
SDGsの取り組みは、長期的には、経営の強化や事業の持続性につながり、結果として「会社の利益」につながります。経営のプラスになるものであると認識することが必要です。
(1)消費者・顧客
SDGsの認知や関心が高まるにつれて、「消費者・顧客」の視点も変わってきており、昨今では「SDGs に即した商品やサービスを好んで使用したい」という消費者が増えています。具体的には、最小限度のものを購入する(ミニマル)、長期的に使用する(ロングライフ)、循環型で使用する(サーキュラー)といった消費行動への関心が高まりつつあります。
欧米ではすでに、同等の製品の場合には「SDGs配慮型の製品やサービスの方がより販売量が多く、利益貢献度も高い」といった状況があり、今後は国内でもSDGs教育を受けてきた今の義務教育世代を含めた学生・若者が中心消費者世代になるにつれて、このような変化がより顕著になってくるものと考えられます。
(2)取引先
「取引先」からの視点は、とりわけ企業間取引において重要性を増しています。特に大手企業におけるSDGs経営推進の動きは、グループ企業や取引企業にまで及び始めています。ある大手企業では取引企業に対し、SDGsに関連した環境や地域貢献の取り組みなどを確認したり、徹底するところでは、CO2削減目標数値をアンケートとして求めたりする場合もあります。
大手企業との取引を継続するために必要という見方だけではなく、むしろ、大手企業との取引を拡大させるための一つのきっかけ・武器としてSDGsを活用する視点を持つことが重要です。
(3)資金調達
地域金融や中小企業の資金調達においても、SDGsの重要性が高まっています。具体例として、環境省では全国の地方銀行や信用金庫に対して、地域ESG金融の促進を図っています。都市銀行、第一・第二地方銀行のみならず、信用金庫、信用組合など多くの金融機関がSDGsに取り組む企業に有利な金融商品を発表しており、その傾向はますます強まってきています。地域経済においても、地域銀行や信用金庫などを中心に、ESG投資( = 企業活動における環境(Environment)、社会問題(Society)、企業統治(Governance)という非財務情報を重視する投資手法)の観点を重要視する動きが出てきています。
(4)採用
これから社会に出る若年層は、SDGsを身近に感じるようになっています。2020年度から小・中・高校で順次実施されている新学習指導要領(*1)は、前文と総則に「持続可能な社会の創り手となる」との文言が盛り込まれるなど、SDGsを強く意識した内容になっています。すでに多くの私立中学校入試問題では、SDGsに関するテーマの出題がなされ、持続可能な社会の実現に向けての関心や思考が問われています。一人一人の児童生徒が、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが、これからの学校には求められているのです。(*1:学習指導要領「生きる力」(文部科学省))
さらに昨今、大学には、SDGsの達成に向けた次世代リーダーの育成や研究開発、最先端のデータ・政策の分析等が強く求められるようになっており、すでに多くの学校の授業でSDGsが取り入れられています。そのため、大学生もSDGsに関心を持つようになり、企業規模の大小や福利厚生などの条件面ではなく、「SDGsにどれだけ寄与しているか」といった視点が就職先の一つの選定基準に含まれるようになってきています。
こうしたことを背景に、企業の採用活動においては、SDGsに取り組むことが有利に働き、逆に、意識をした経営をしていないことは不利に働くということも予想されます。中小企業にとっては、SDGsを取り組んだことの成果に直結しやすい領域とも言えると考えられます。また、こうした子供たちは、採用の面だけでなく、5年後、10年後の社会において、消費者・顧客、投資家、取引先などにもなっていくことを忘れてはいけません。